膿漏の回復・治療が出来ていれば総義歯にせずに済み、延いては抜歯に至る事もなかったかもしれません。しかしながら、熱意をもって膿漏治療にあたってくれる医師というのはそう多くないように思われます。歯科不信の大きな要因の1つとも考えられますが、それならば総義歯にした方が良いという思考に陥るのも無理はありません。また、総義歯に対するもう一つの懸念は、「歯茎つまり義歯の土台となる部分の減り」だと言えるでしょう。Hさんの場合は40代。この年代ならば総義歯にしたとしてもまだ歯茎はしっかりしている為、向こう10年は大丈夫だと考えられます。しかし心配なのはその後です。歯茎というのは歯が無くなると徐々に減っていき次第に噛めなくなっていきます。ただ、この点に関しては個人差がありますので、例えば本ケースでHさんが必ずしもそうなるとは限りません。とはいえ、「総義歯が上手く使えなくなるまで土手が減るまで、目安としてざっと10年」この事を見通せずに総入歯にしてしまった事で、再び柔らかい物しか食べられない、老後の愉しみが1つ減ってしまうという話は少なくありません。となると、総義歯になる年齢も考えどころだと言えます。「少なくとも仕事の第一線を退くまでは」など最大限遅らせる努力が必要です。ブラッシング指導・膿漏治療の重要性が再認識されますね。